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2022年度 理事長所信

屋比久 盛友の写真
第44代理事長 屋比久 盛友

【はじめに】

今から73年前、戦後の混乱期に新日本再建の使命をもって設立された青年会議所は、苦難に満ちた日本の情勢を打開すべく青年が結集した組織であります。「明るい豊かな社会」の実現を思い描き、新たな時代の幕開けと変革を今日まで幾度となく繰り返してきました。652番目の青年会議所として認証された大和青年会議所は、今年度で44年目を迎えます。大和青年会議所の長期的展望、宣言にもある「愛 夢 幸せあふれる まほろば大和」の実現に向けた運動は、歴史と伝統が積み重なった功績であり、先輩諸兄の情熱と信念に深く感謝をすると共に、私たちは時代を更なる未来に紡いでいくという大きな役回りを担っていることを理解しなければなりません。

新型コロナウイルス感染症が世界中で蔓延してからというもの、国家の統治から、人々の暮らし方、世界経済への参加の仕方に至るまでこれまで通用してきたありとあらゆる社会の筋書きは見事にずたずたに引き裂かれてしまいました。まさに今回の感染症パンデミックは世界的にも、社会の仕組みの分断を加速させた戦後最大の試練だと感じております。

また、先進国となった日本の物質的な豊かさ、インフラの発達やテクノロジーの進化は物理的にも空間的にも世界をコンパクトにし、世界を身近にすることに成功しました。しかし、自らの利益を優先し最大化した利己主義な経済成長は、環境および社会へのさまざまな負担の膨大化という、地球規模での危機が顕在化し、世界共通の社会課題解決への認識が高まりました。国連の掲げる目標であるSDGs、持続可能な社会の実現への取り組みは「現代」を生きる私たちJAYCEEが使命感をもって社会意識変革の一翼を担う責任があります。地域に必要とされる団体として存続し続けるために、私たち青年である大和青年会議所は保守的な考えをもつのではなく、希望に満ちた理想の社会の実現に向け、地域課題の解決をリードする推進力にならなければなりません。

【活力あふれるまちづくり】

大和市は、昭和34年に県内14番目の市として人口3万5000人で誕生し、現在では23万人を超える市民が暮らす都市へと成長しました。私は、ここ大和市で生まれ育ちました。通いなれた通学路や商店街、暗くなるまで遊んだ近所の公園や学校の風景は今も色褪せず、町内のお祭りなどは活気にあふれ、肌で感じたその活気に心を躍らせていました。この原体験こそが、愛郷心を育むきっかけとなり、まちへの愛着心を自然と根付かせてくれました。大和青年会議所を構成する多くのメンバーにもそんな経験があり、愛郷心・愛着心にあふれているのではないでしょうか。心躍る活気ある場所を創造している人々は皆、能動的な熱量を持ってアクションしていて、地域を活性化させてきました。能動的な熱量のアクションが人々を動かし、次第に大きな波となりムーブメントが起きることで、活性化された地域の場所が生まれます。しかし感染症パンデミック以降の地域は活気あふれる場所が多く失われています。地域に大きな輪を生み出しムーブメントを起こせる団体は、これからの時代においてもやはり私たちJCであるべきだと確信しています。なぜなら、JCとは発展と成長の機会を提供されている団体であり、まちをつくる「運動」を、メンバー自身が起こせるようにすることを使命としているからです。私たちの創るJC運動が、本当の意味で地域社会の発展に貢献できているのであれば、JC運動は必ず大きな運動となって大和のまちをより良いまちへと変え続けていくはずです。

単年度制である青年会議所は、メンバーに、より多くの機会が与えられるという大きなメリットがある反面、乗り越えるべき課題があります。それは「持続性」です。組織の中身・役回りは単年度制ですが、組織そのものは継続していきます。したがって、総会等において意思決定がされたものについては、年度を越えて持続させていくことが組織として求められます。2030年に向かう運動の大きな方向性を議論し総会決議し、手法については各年度がしっかり考え構築することで、単年度制のメリットを活かしながらまちを具体的により良くする、運動の背景が生まれてくるものと思います。

また現在、パンデミック後の青少年たちは私たち青年会議所が多くの活動機会を失ったのと同じように、日常で得ていた多くの経験を失いました。屋外での活動の減少や未知の感染症に対する不安感などは、青少年たちの成長によくない影響を及ぼす恐れがあります。私たちのまち大和市は、「緑の基本計画」にもあるように質の高い大きな緑、小さな緑がバランスよくまち全体に配置され、「歩いて楽しい、そして身近な緑を楽しめるまち」をめざす、豊かな自然に恵まれるまちです。私たち大和青年会議所はこのまちの特性を活かし、自然体験活動を充実させる取り組みを展開することで、青少年たちを取り巻く環境に生じている閉塞感を打破するとともに、青少年たちの元気を取り戻し健やかな成長を図ります。

私たちが地域をリードし熱狂して行動することで、ムーブメントは起こり、活力あふれるまちづくりの推進が行えます。

【地域企業とのSDGsパートナーシップ】

SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。SDGsは環境や人権の問題を解決しなければ、長期的な時間軸で見ると、経済発展が持続できなくなることを痛烈に指摘しています。

2019年日本青年会議所第159回総会において、全会一致でSDGs推進宣言が採択されました。これにより大和青年会議所でも、これまでやっている運動やこれからやろうとしている事業をSDGsに結びつけ、強力な推進活動を行ってきました。世界に通用する社会を良くするための目標がSDGsなのです。SDGsの掲げる目標を目指して地域社会を良くすれば、大きなまちづくりへと繋がり、それは世界にも通用し、地域経済はもっともっと良くなるのです。良い地域社会は人とお金を引き寄せ、私たちの経済も今よりも良くなることでしょう。

現在、SDGsはビジネスの世界での共通言語となりつつあります。投資条件として収益性だけではなくSDGsの取り組みまで見られるようなこの時代に、大和市を拠点とした地域企業にSDGsの取り組みを推進することは企業の発展やまちづくりに大きく関わります。企業経営の道しるべとさえなるSDGsをより多くの地域企業とパートナーシップを組み目標に向けた取り組みを展開することで、企業は長期的な視点で社会のニーズを重視した経営、事業展開となり将来に渡って継続し、より発展していく地域経済の下支えとなります。

【広報ブランディング戦略で拡がる会員拡大】

JCが設立されて以来、唯一途絶えることなく継続している事業があります。それが、会員拡大です。私たちのめざす運動は、一人の力では当然成し得ないからです。そして、運動を継続的におこなうためにも、常に会員拡大は必要で、一つの重要な事業なのです。

大和青年会議所の2021年度の新入会員数は16名、期首会員数から比較した拡大率は57%増と大躍進となりましたが、依然として20代の会員や女性の会員拡大はできていない現状です。人材の多様性を活かして事業を成長させ、組織を強化するためにも青年会議所は経営者の団体、2代目3代目のサロンであるといったイメージを払拭しなければなりません。人材の多様性、つまりダイバーシティには年齢や性別、人種などの目に見える属性だけではなく、価値観やスキル、働き方などの目に見えない性質に重きを置きます。ダイバーシティマネジメントの必要性が高まる要因としては、社会貢献意欲のある幅広い層の人材確保、JCの新しい価値の創造、組織の社会的評価の向上があげられます。

将来に向かって大きなムーブメントを起こし続け、より良いJC運動や活動を行うためには、今以上に多様性あふれる多くの同志、仲間が必要となります。じゃあどうすれば多様性あふれる潜在的なニーズのある拡大対象者にJCを惹きつけられるか。人が何かに惹きつけられる理由はいつの時代もどんな場所でも同じで、「おもしろい」と思うかどうかです。では「おもしろい」と思われるにはどうすればいいのか。まず、君と一緒に活動できるのは魅力的だと思われるような地域に影響力のある人間になること。または、多くの人に魅力的だと思われる事業の発信をしていくこと。そして入会者にはこれまでの社会生活では得られなかった変化、自己成長を感じてもらえる組織である必要があると考えます。おかしな伝統に縛られ議案に没頭し、やる気と時間を浪費していては本末転倒とさえなります。JCとしての最大の社会貢献は自身が成長し、若者を育成することにあります。

そして、会員拡大にとって切っても切れない関係にあるのが、広報とブランディングです。これまで行っていた、メンバー個人が偶発的に拡大対象者を見つけ誘っていくような拡大活動も重要な手法となりますが、今後は組織として戦略的に拡大が行える仕組みづくりが必要となります。継続して組織として再現性のある拡大活動が行えるようになる為にもまず、広報とブランディングに更なる力を入れるべきであります。広報とは、認知を広げ、ファンを増やし社会的評価を得て組織のブランディング価値を高めることが目的となります。具体的には、継続的に一貫したSNS発信やメディアへのプレスリリース発信をし続ける必要があります。多くの人の目に留まるようSNSのハッシュタグは戦略的に固定化するのは勿論のこと、プレスリリース先のメディアリスト作成を行い毎例会、毎回発信するようにし記事に取り上げてもらえるようにします。SNSでの発信では一貫性を持ったメッセージを発信し続ける広報がブランディングになり、その価値に共感してくれる人(ファン)を増やすことが求められます。SNSは流動性の高い媒体であるが故に、目に留めてもらえるような画像の選択、ユーモアのあるテキスト文章などで多くの潜在的なニーズのある拡大対象者にアプローチします。広報ブランディングの活動は戦略を練り、年間計画、実績のデータ分析、PDCAを回しながら広報の品質向上を行うことが必要不可欠です。ここでも年間計画で目標を掲げ、バックキャスティング的な手法で広報・ブランディング計画を構築します。ブランディングは結果が出るまでに時間がかかりますが、一喜一憂せずに長期的視点でチャレンジし、構築できてしまえば未来に向かって潜在的なニーズのある者が顕在化し、拡大対象者や会員メンバーへのアプローチがしやすくなります。

また、ブランディング強化はメンバーの帰属意識を高めます。エンゲージメント向上にも繋がることで、JC運動や活動にやりがいが生まれ「おもしろい」の感情があふれてくることでしょう。そうした拡大対象者のニーズの創出から、多様性あふれる地域の拡大対象者と私たちメンバーが共に学ぶ機会をつくり、交流の場を設けます。オンラインを活用したコミュニケーションの場、お悩み解決、セミナー形式によるメンバーや拡大対象者による、プレゼン勉強会などを実施し、新たな枠組みでのコミュニケーションの向上を図ります。そして、多様な人材を活かせる組織のダイバーシティ化を目指し、20代の若者や女性会員の拡大を実現させます。女性と男性が同じ動きをする必要はありません。組織も女性ならではの複雑な事柄をマルチタスク化する優れた能力や冷静さ、女性目線の意見といった特長を取り入れることで組織を活性化させ,よりレジリエントな組織へと成長することができるでしょう。

【イノベーションを生み出す会議運営】

近年、組織運営について様々な声が上がるなかで、思うような変化が得られていないのが現状ではないでしょうか。運営についての問題点や課題を提議するのは簡単ですが、勇気と覚悟を持って変革に挑戦することで次の展開へと進むことができます。コロナ禍以降、従来通りの会議や活動、運動発進が困難ななかでも、WEBオンラインを活用しての活動が積極的に行われています。その結果、オンライン活用を推進したメリットを感じた一方で、デメリットがあることも確かに痛感しました。ただ一つ確かなことは、これまでにはなかった新しい組織運営の手法を手にすることができたということです。これは今までの手法に対しても更なる可能性を生み出すことに繋がるはずで、その為にも私たちはWEBオンライン活用の手法を積極的に活用した組織運営を更に深く掘り下げ、模索し挑戦していかなければなりません。外部変化があればあるほど、それを糧として新たなソリューションからイノベーションを生み出す組織に変化していく組織運営が、強靭なレジリエントな組織といえます。現状に怠けることなく未来を描き、これからの時代に即した組織運営を進めることが私たち大和青年会議所の存在価値を高めることにつながります。

総務は、組織運営において重要な役割を担います。私たち青年会議所の運動、事業の原点はその名の通り会議にあります。全会員に理事会をオブザーブしていただく設えを整え、盤石な質の高い組織運営を目指し、法令遵守、内部規則の遵守の点でもチェック機関としての役割を遂行する必要があります。会議は緊張感と厳正なる環境を保ち、意見の飛び交う設えをすることを意識し、会議の質を追求して行かなければなりません。

また、私たちの活動、運動のための財源はメンバーからの年会費や登録料、シニアや賛助会員等からの外部資金から成り立っております。事業を行っていく上で欠かせないこれら財源が一般社団法人として私たちの目的に沿って有効活用されているかを今一度考え調査し、厳格かつ透明性をもって運用してまいります。

【自己研鑽を目的とした渉外と組織構築】

私たちの組織を構成するメンバーは在籍年数の若年化が年々進み、今後メンバーの資質や組織構築が課題となるのは明白です。拡大数は順当に上昇を推移するものの、JCの理解や経験値の低下が原因で、組織そのものが本来在るべき目的の達成に背いてしまうことが懸念されます。ⅠTの加速的な普及によるDX化はビジネスモデルの効率化を変革させますが、青年会議所活動において自己研鑽を大きな目的とした場合、変えるものと守るものという選択は効率だけでは選べない状況にあります。こういった社会変化もしっかりと鑑みて組織内部の環境整理、メンバーの多様な能力を最大限に引き上げ活かし、成長を促すことを重要な目的とし組織の構築と運営を行います。

また、同じビジョンをもつ全国のLOMとの渉外活動を活発に行い、他LOMの運営などを積極的に学ぶことで、より良いLOM運営が可能になります。今年度のJCI大和では、神奈川ブロック協議会に副会長を輩出することとなりました。また、県央4LOM、親子4LOM、友好JC盟約を結んでいる甲州青年会議所との相互交流の機会も多くあります。京都会議から始まり、サマーコンファレンス、関東地区大会、神奈川ブロック大会とこれらの恵まれたネットワークを循環させることで、相互交流の発展を目指します。

【結びに】

この10年間で世界の社会環境、経済の競争原理は大きく変わり、国も世界との競争力を発揮できるチームの再構築が求められています。しかし現状は世界のパラダイムシフトについていけていない、リードをとれていないという大きな問題を抱えています。青年会議所でも、感染症パンデミックによりパラダイムシフトがより加速されることが予想されます。このような社会背景からビジネスの構築、人口減少や晩婚化による家族構成までが昔とは違うこの時代に、時代の移り変わりと組織本来の存在価値を照らし合わせ、これからの新しい大和青年会議所の姿を確立することが必要です。私たちは、まちづくり、拡大、総務、渉外といった4つの骨子を基軸として、変化を恐れずより良い未来を描き、失敗を恐れずに果敢にチャレンジして行きます。保守的な考えを捨て、大きな一歩を踏み出し、前進して結果にコミットしてまいります。

最後に、自らが進化の原動力となり、変革の起点となるために、限りあるJC活動に責任と覚悟を持って務めさせていただきますことを誓い申し上げ、一般社団法人大和青年会議所2022年度第44代理事長としての所信と致します。