大和JCは20歳から40歳までの
メンバーで活動している団体です
[お問い合わせ]
TEL046-263-2691
 FAX046-262-5101

2023年度 理事長所信

古谷田 高穂の写真
第45代理事長 古谷田 高穂

【はじめに】

1949年、戦後間もない復興期に、日本で最初の青年会議所である東京青年会議所が設立されました。その2年後、1951年に「個人の修練、社会への奉仕、世界との友情」のスローガンのもと日本青年会議所が設立されました。そして、1979年に「明るい豊かな社会の実現」の旗印のもと、全国で652番目の青年会議所として大和青年会議所が設立され、先輩諸兄姉の揺るがない情熱と、その時代とその先の未来を見据えた運動を実践することで、この大和の地に光を灯し続けて参りました。

そして、2023年。設立45周年目の現在、私たちは不確実性の時代を生きています。2年前から続く新型コロナウィルス感染症のパンデミックに伴う外食業や観光業の業績低迷や、少子高齢化による生産年齢人口の減少により、経済成長の鈍化や社会保障制度崩壊の危機など数多くの社会問題を抱えています。一方で、感染症の拡大を防ぐために、WEB会議やSNSを利用した情報の発信と技術の向上、働き方改革を始めとする生活様式の変化など、良くも悪くも多くの不確実性を伴って時代は進んでいます。それは、私たちの住むこの地域においても例外ではありません。このような、予測困難な時代を生き抜くためには、急速な変化に対応していくための、臨機応変な対応力が必要不可欠です。私たちが、未来をしっかりと見据えあらゆる物事に対応し、そこに住まう人々のために運動の灯を絶やさないことが、持続可能な社会を育む礎となることでしょう。私たち青年会議所には、それができるのです。

私は、2017年の入会以来、副委員長、委員長、副理事長を。出向先として、日本青年会議所と神奈川ブロックの委員、スタッフ等を経験させていただきました。また、社業としては、大和市と海老名市とに老人ホームや保育所等の福祉施設を数か所有する法人の事務職を務めております。日々、福祉と向き合う中で、青年会議所としても地域福祉へ積極的に参画していけたら、と常々感じておりました。このように年月と役職を重ねる中で、「青年会議所で自分にはいったい何ができるのだろうか」「この大和という街をより良くしていくためには、どうすればいいのか」ということを絶えず自問自答して参りました。入会当初こそ漠然とした思いばかりでしたが、大和青年会議所理事長という職を務めるにあたり「何ができるのか」や「どうすればいいのか」という問いへの答えを示していけたらと考えております。

活動の柱としては、次の四点を考えています。まず、一点目は、「まちづくり」と「SDGs」に関してですが、本年度は「福祉」の考え方を取り入れた事業の展開を試みます。「まちづくり」や「SDGs」の取り組みと「福祉」の考え方とは親和性が高く、また違った視点に立った活動が行えるのではないでしょうか。二点目は、組織力の向上についてです。組織力の向上こそが、魅力ある組織の継続と会員拡大に繋がると考え、組織力向上に焦点をあてた取り組みを実施します。三点目は、会員同士のつながりの強化です。青年会議所に入会したものの、新入会員や入会が浅い会員にとっては活動内容がしっかりと浸透していないことも多々あり、「自分も地域のために何かをしたいが、何をすればいいのか分からない」という思いを抱えている者もおります。まずは、各事業への参加を自分事として捉え、青年会議所へ所属しているメリットを最大限活かしていけるような下地を整えて参ります。最後に四点目は、適正な運営規範の模索により、盤石な組織運営を進めていきます。すでに大和青年会議所には、定款や各種規定に記載があるように、従前より培われてきた運営に関する手法が存在しますが、工夫し効率化できるような部分については見直す必要があると考えております。

また、45周年という節目の年でもあります。過去の軌跡をしっかりと見つめ直しながら、今を考え、10年後、20年後の未来へ向けて、一つの起点となるような年度にして参ります。

【「誰もが住みよいまち」を目指して】

青年会議所は、地域における「まちづくり」を推進すべく、日夜その運動に励んでいます。大和青年会議所においても例に漏れず、これら運動の展開を例会事業という形で体現しているわけですが、この「まちづくり」とは一体どのようなことを指すのでしょうか。

一般的に「まちづくり」というと、壮大でお金のかかること、と捉えられがちですが一法人が一から「まち」の土台となるような環境や、そこに住まう人々が住みよい仕組みやルールを整備するには、莫大な時間や労力、お金が掛りとても現実的とは言えません。そこで、重要になることは、行政や諸団体、市民と関わりながら地域に潜む問題を見定め提起し、その解決の糸口へ繋がるようなやり取りを重ねることです。すなわち、「まちづくり」とは、地域に住まう皆で手を取り合いながら、今ある問題に目を向け、その解決への道すじを模索していくプロセスに他なりません。その到達点に「誰もが住みよいまち」があるのです。

それでは、「誰もが住みよいまち」へ到達するために、私たちにできることは何でしょうか。ここでポイントになるのが、「誰もが」という言葉です。誰かには良くても、誰かがダメではだめなのです。この考え方を発展させたものに、福祉という言葉があります。福祉とは「人の幸せ」であります。「人の幸せ」とは、自分も他人も幸せになることを意味します。「誰もが住みよいまち」を目標にした「まちづくり」にとって、この福祉の考え方は必要不可欠です。

そこで、本年度では、この福祉の考え方を中心に据えた運動を進めていきます。福祉といってもその領域は多岐にわたります。高齢者、児童、障がい者、生活困窮者…更に裾野を広げれば、福祉防災や福祉スポーツという概念もあります。まずは、大和市内における福祉を取り巻く状況を見つめ直し、潜んでいるだろう課題を顕在化し、その解決策を模索すること。もしくは、地域に根差す福祉をさらに促進することで、暮らしをより豊かにするような事業を実施します。これは、SDGsの考え方とも親和性が高く、「誰もが住みよいまち」を目標にすることで自然とSDGsを実践している、というロジックは成り立ちます。

【誰一人取り残さない防災を】

令和3年4月に災害対策基本法の改正が成立し、災害時に大きな被害を受ける障がい者や高齢者、子育て世帯など避難行動要支援者の「個別避難計画の作成」が自治体の努力義務と位置づけられることになりました。その背景には、近年頻発している豪雨災害において、高齢者施設の入所者の避難遅れなどが原因となり高齢者や障がい者といった、いわゆる“災害弱者”に被害が集中しているという現状があります。

これらを踏まえ、“災害弱者”に焦点をあてた事業を展開していきます。例えば、福祉と防災とを切れ目なく連結するための先進的な取り組みとして知られる「別府モデル」を手本に、個別避難計画の大切さを地域住民へ啓発する活動を実施すること。また、その結果を市行政へ提言していくことも一つでしょう。

【「地域を共につくる」一端を担うこと】

大和青年会地所では、コロナ禍以前は毎年のように「大和市民まつり」へ参画しておりました。私も、初めて参加した例会事業が「大和市民まつり」でした。いわゆる“祭り”は、地域住民の地域アイデンティティの醸成を促します。地域内にその地域を代表するような“祭り”があると、地域住民の地域に対する誇りや、愛着などがさらに湧くという研究結果もあるほどです。地域における人とのつながりが希薄になってきている現代において、この“祭り”が果たす意義は大変重要なものです。また、メンバーにとってみても、多くの市民とふれ合う機会があることで、「市民と共に地域をつくっていく」という実感を得やすい事業でもあります。この「地域を共につくる」という実感こそが大切であり、次の活動への源になっていきます。この市民まつりは、残念ながらこの2年間実地での開催は行われておりませんが、本年こそは実地開催を念頭に事業を展開していけたらと考えております。

具体的な内容としては、子育て世帯が心から楽しめるようなものを事業として落とし込みます。大和市は大都市圏への交通の利便性が高いことから、いわゆるベッドタウンとして、子育て世帯の比率が高い傾向が続いています。一方で、子育てについての悩み相談については、年々増加傾向を示しており、官民をあげて子育て支援に力を入れていることが、子育て支援センターの取り組みや、各児童福祉施設での活動を通しても見て取ることができます。私たちとしては、子育てに関する施策に同調する形で、心健やかな子どもたちの育ちと、保護者の支援を「大和市民まつり」の中で実現して参ります。

【「健康都市やまと」の中心に】

昨年度は、3年前から続くコロナ禍の合間を縫うように「エクスポ」というスポーツ事業を実施しました。運動公園の一角で開催された本事業は、自粛が続いたことによる閉塞感や、感染対策のために人と人との交流を減らす、という地域基盤が損なわれる恐れを取り払うため、という側面がありました。

また、大和市は、平成21年2月1日の市制50周年記念式典における「健康都市 やまと」宣言以来、市民がより生き生きと健康に暮らしていくために、保健、福祉、医療などを通じて「人の健康」を守ること、安全で快適な都市環境が整う「まちの健康」、人と人とのあたたかな関係に支えられる「社会の健康」を育てていくこと(健康都市やまと宣言より抜粋)を施策の一つとしております。私も市民一人ひとりの健康と、その先の幸福へ向けたこの宣言には大いに賛成であり、「誰もが住みよいまち」を目指していくためには欠かせない要素が詰まっていると感じます。

そこで、この「健康都市やまと」宣言にも掲げられている「人の健康」にまつわる事業の中心として。前述したように、コロナ禍の影響を取り払い、人と人との関わりを絶やさず実践を継続していくという意義を込め、「エクスポ」を引き続き事業として実施していきたいと考えております。また、本年は、前年の内容に加え「誰もが楽しめる」スポーツ事業として、スポーツが苦手な人でも、得意な人でも、障がい者でも、子どもでも、高齢者でも、あらゆる人がスポーツを通してつながれるような事業にして参ります。

【組織力の更なる向上を】

青年会議所の難しいところは、単年度制であるがゆえに組織力の向上に対しては、効果的な取り組みを継続して実施しにくいという点が挙げられます。しかし、大和青年会議所にとって、組織力の強化を目指すことは、青年会議所の理念に基づいた運動を拡大していくためには、欠かすことのできない要素であります。そこで、組織力を向上するためには、どのような行動を取り続けるべきかを考えていきます。

まずは、メンバーが同じ目標を共有し、同じベクトルへ動いていることです。メンバーが同じ目標を共有していて、目指すべき方向性がはっきりしていることが重要です。これらを示すことで、メンバー同士もしくは、メンバーと組織が相補的関係である、という意識も掻き立てやすく前向きな動機づけに繋がります。青年会議所においては、JCI MISSION VISIONなど、いわゆるセレモニーで謳われている文言の意味を一人ひとりがしっかりと理解することで、同じベクトルを向いて運動を推進していくことができます。

次に、互いに助け合える関係をつくることです。メンバーと組織が相補的関係であるという認識が浸透していると、助け合う心が生まれます。誰かが困っているときに助言をし合えたり、他委員会であっても積極的に情報共有をしたり、助け合うことが当たり前になっていきます。自分が助けてもらうことで「次はあなたの力になりたい」という理知的な思考が良好な組織をつくります。助け合いの心は信頼関係のもとに成り立ちますので、「大和青年会議所やメンバーを誇りに思う」というエンゲージメントを育てやすくなり、目的に向けて自分なら何ができるのか、という気持ちが自然に芽生えるはずです。また、普段から積極的なコミュニケーションがあり、風通しのよい組織であることです。メンバー同士で、意見やアイディアを発信し合える仕組みが整っており、内外のあらゆる情報交換が活発に行えていることが大切です。

また、人材の育成と個人のノウハウの共有も欠かせない要素です。人材育成に関する制度がしっかりと整備されていることで、組織に所属していることへの安心感が高まります。また、個人の能力を最大限に活かせる役割を担ってもらうことで、メンバーそれぞれが持っている知識や知見、ノウハウを発揮しやすくなります。自分の持っている能力を発揮できるため事業にやりがいを感じ、積極的に組織に関わりたい、という動機づけに繋がります。

個人の力を引き出し、地域に新たな視点を

青年会議所に所属する以上、会員としての成長はもとより一人の人間として成長してほしいと思っています。能動的な自己成長は、会員同士の士気の高揚にもつながりより強い組織を形づくる礎となります。新たな知識を得ること、今持っている知識をさらに広げるとことで個人の資質と能力を最大限に引き出し、それをまた運動の発信へと紐づけていく。その運動が地域に新たな視点をもたらし、更にその運動を展開していく過程でも自己の成長へとつながる。そのような流れを作れることが理想だと考えます。

新たな知見の拡大と、自己成長の場として研修事業へ取り組むことが重要です。例えば、福祉とも関わりの深い「人権」についての研修を行うことで、人の集まりである組織の在り方そのものを追求していくことも大切です。「人権」とは、人が人として、その社会の規範の中で自由に考え、自由に行動できる権利のことです。そして、この「人権」を一人ひとりがしっかりと理解することで、健全な組織の運営を支える拠り所の一つとなるのではないでしょうか。また、そこで得られた知見を、市民へと広げていくことで「明るい豊かな社会」の実現を目指すための一助のできればと考えます。

また、メンバーが事業を通して成長することで、地域に対して新たな視点や価値観をもたらしていくことも大切です。例えば、近年、世界的にも注目されているeスポーツを事業として展開していくことも一つでしょう。実は、eスポーツは福祉とも関わりが深い取り組みで、個人ごとの違いや、障がいのあるなしに関わらず誰もが参加できるコンテンツとして存在価値が高まっています。昨年度は、神奈川ブロック協議会においても事業として取り組まれているように、メンバー同士のコミュニケーションの強化と、誰もがどこにいても参加できるというメリットを最大限に活かした事業展開が図れるのではないでしょうか。eスポーツを通じ組織力の向上と、大和市の地域福祉に新たな視点をもたらしたいと考えます。

責任ある会員拡大を

そもそも組織とは人の集まりです。青年会議所は、会員資格に期限があるがゆえに会員を増やさなければ人数ばかりが減り、やがて組織として成り立たなくなってしまいます。また、新しい会員が入ることで、従前からいるメンバーが教える立場になり、より組織に関わろうとする動機づけや、新入会員の新たなアイディアや、知識の蓄積がさらなる運動の糧になります。つまり、会員拡大は、組織力の向上にとって必須条件であると言えます。ただし、闇雲に人数ばかりを追い、とりあえず入ってくれれば良いとする拡大の方法は、あまり褒められたものではありません。入会の際には、きちんと大和青年会議所の考え方や、現在の活動状況などを説明したうえで、迎え入れることが大切です。なぜならば、その組織に所属するということは、その人の人生の一部を引き受けることだからです。大和青年会議所の会員になることで、良くも悪くも新たな知見や認識をもたらし、その人の人生に何らかの影響を与えてしまうかもしれません。責任を持った会員拡大をしていくことが大切です。

会員同士の絆を育むこと

大和青年会議所にとって、新入会員へのフォローは重要な課題の一つであります。青年会議所の運動に共感し、高い志を持って入会してくれたにも関わらず、その後のフォロー体制が整っていないとメンバー個人の力を効果的に引き出していくことが難しくなります。また、自分が青年会議所で何をすべきかが分からない、という状態が長らく続くと組織への帰属意識も下がり、それは他のメンバーへも伝搬し、組織そのものを弱くしていきます。そこで、本年は、会員間のフォロー体制について調査、研究を実施し、会員同士のつながりを強化し育んでいくような仕組みづくりを目指していきます。

例えば、理事メンバーが一人の会員とペアになり、青年会議所での活動のことや事業についての情報共有、または仕事や家族のことなど何でも話し合える間柄を築いていく「バディ制度」を導入するなど、会員同士の絆を育むことに力を入れて参ります。

適正な運営規範の模索

青年会議所は会議と名にあるように、会議をする団体です。総会を通して組織全体の意思決定を採択し、理事会を通して事業や業務の執行を議決します。その際に、会議の進行を妨げてしまうような不備があると、本来話し合うべき議題に集中して向き合うことができません。会議での決めごとが法人の適正な運営を左右するものならば、これは看過することのできない問題です。

この点については、しっかりと問題点を見極め、盤石な運営規範を整え、適正な会議の設営に資することが重要です。また、情報共有という点については、工夫する余地があると考えます。例えば、事業に関する議案等の情報については、昨年度、神奈川ブロック協議会で立ち上がったオンラインストレージである“KISEKI”を活用することで、議案書や各種資料を保存し共有をすることで、時間や場所の制約なく最新の情報を把握することができます。また、“KISEKI”へ議案書などの資料を蓄積し閲覧することで、新しい事業を構築する際の参考にしやすくなり、より精度の高い議案書を書き上げることが可能になります。その他にも、スケジュールアプリを利用することでスケジュールの共有をリアルタイムで図るなど、より効率的に運営をしていく方法はいくらでもあります。これらの積極的な導入を進めていくことで、事業活動により専念できる体制づくりを目指します。

地域に愛される組織を目指して

私たちは地域社会を巻き込み、市民へ新たな価値観の提示や、意識変革を目指す団体です。しかし、いくら実りある素晴らしい事業を実施していても、それが地域に住まう人々にきちんと認知され受け入れられなければ、運動としての効果は期待できません。その際に必要になってくる活動の一つが広報です。現在では、SNSを始めとするデジタル技術の発達により、様々なツールを用いて多くの人々に双方向に情報を共有することができるようになりました。そして、大和青年会議所においても、ホームページやSNSなどのツールを活用した広報活動で私たちの運動を発信し、その存在価値を高めて参りました。ここからは、更に一歩踏み出し「地域に愛さる組織」を目指して広報活動を調査、研究し、私たちの運動をより効果的に発信するための方法を模索していくことが大切です。私たちの日々の活動について市民の目に触れる機会を多く作ることで、大和青年会議所への愛着心を育てていきたいと考えております。「地域に愛される組織」になることで、メンバーにとっても所属することへの誇りが自然と芽生え、帰属意識の醸成へとつながっていきます。

結びに~45周年の節目に~

本年度のスローガンとして「from now on」という言葉が思い浮かびました。直訳しますと「(永続的な未来へ向けて)これから」という意味です。私たちの「これから」に思いを巡らせながらも、確かな「今」を大切にしていきたい。そして、「今」と「これから」には、必ず輝かしい「過去」があったことを忘れてはなりません。大和青年会議所の45年に及ぶ軌跡をたどり「今」と「これから」に思いを馳せるような…そのような45周年、そして2023年度にしたいと考えています。